地方議員を経験した友人によれば、宴会や視察の時にコンパニオンを呼びお酌させたり、膝に乗せたりなどの接待はごく普通にあるとのこと。もしかしたら日本の地方議会、明治時代から変わってない? 女性を一定数入れるクオータ制、本気で導入すべき時なのかもしれません。

 世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数は政治、健康、経済、教育の四つの視点で測られます。健康の分野では、2019年の日本は40位(実質1位の国が39カ国あるので、2位のようなもの)と、かなり上位。それなのになぜ総合で121位なのかといえば、ひとえに政治と経済のせい、につきます。政治のジェンダーギャップは152カ国中144位。もうね、石油国しか周りにいないです。ちなみに韓国の政治分野ははるか上の79位。政治に女性を入れれば、ジェンダーギャップ、もう少し上にいけるんです。

 以下は駆け足で。

6 アフターピルの処方箋なし購入を求める署名に10万人以上が賛同しました。海外でも韓国の堕胎罪廃止運動、アルゼンチンの中絶合法化運動など、今年は世界各国で女性の身体をめぐる運動が活発化しました。

7 女性の自死者が急増しています。10月は前年比の2倍近くにも。自死者の背後にはその何倍もの未遂という現実があります。コロナ禍でよりいっそう過酷に女性の人生が壊されています。

8 法務省の性犯罪に関する刑事法検討会に、性被害当事者団体「一般社団法人Spring」の代表理事、山本潤さんが入りました。当事者の声が聴かれる検討会は初めてのことです。被害者を置き去りにしない刑法改正への希望の一歩です。

9 眞子内親王のお気持ち発表が大きな話題に。いわば、皇室の女性も「好きな人と結婚するのだ」と声をあげたということ。これはかなりの事件かも。来年も皇室の女性たちから目が離せません。

 最後の10番目は、石原慎太郎氏の最新作『男の業の物語』(幻冬舎)にしたいと思います。いわゆる、男は女とは違うんだ、男は無情なのだ、ダンディズムなのだ、なぜなら男だからなのだ……ということが記されているオレ様の本です。

 SNSでこの本に関する書き込みなど見ていたのですが、ほとんどが苦笑、失笑、嘲笑、憐憫でした。「男」という言葉を石原氏自身が貶めてしまっているかもしれないのではないかと心配になるほど、さんざんな笑われ方です。そのことに2020年年末、私は希望を感じます。

 もしこの本が10年前に出ていたら、「あ、バックラッシュきた」と構えたかもしれません。「ババア発言」しかり、女性をさんざん貶めてきた元都知事には、やはり身構えてしまう耐性ができてしまっています。でも2020年、石原氏がただ老衰したからという以前に、社会の空気が「もう、それはないよ」という方向にシフトしつつあるのを実感します。

 もちろん決して油断はできないジェンダーギャップ121位の国。でも、全部が全部悪いわけじゃない。私たちは私たちの声によってひどい現実を変えることができるのだと信じたい。そんなことを2020年、私は手にすることができた気がするのです。声。これがフェミ的には2020年の一字。

 というわけで!2021年はもっともっと声が届く希望の年にしていきたいですね。みなさま、よいフェミ年を。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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北原みのり

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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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