「現在でも、介護離職する人は年間10万人程度いるとされていますし、予備軍は100万人とも言われています。しかし、いったん介護離職をしてしまうと、そのあとの復職率は厳しいものがあります。再就職できた人は半分にも満たない43%、さらに正社員となるとわずか20%なのです」

「親を施設に預ければいいではないか」という声もあるだろう。

 だが、費用負担が軽い公的施設の一つ「特別養護老人ホーム(特養)」の待機者数は、全国で30万人ともいわれる。そして、この特養待ちは特に、首都圏などの都市部で深刻だという。
 
 もちろん、親に十分な資金があれば有料老人ホームなどの民間施設に入ってもらうこともできるだろう。しかし、そんな余裕のある親ばかりではないだろう。

 では、介護離職という事態を少しでも回避するためには、どうしたらいいのだろうか。前述の吉田さんはこう話す。

「介護は誰にとっても、いつ、どんなときに始まっても不思議ではありません。介護離職に追い込まれないためには、ある程度の年齢になったら介護の基礎的な知識をもっておくこと、親と話し合っておくことなどが重要です。介護の基礎知識や使える制度やサービスを“知っているか知らないか”で初動が異なると感じますね。介護について何も知らない状態だと、無駄な行動が多くなりがちです」

■介護で追い込まれないために、情報は早く知っておくこと

 介護は、ある日突然、脳梗塞(のうこうそく)で倒れてマヒが残ったり、転倒して大腿骨(だいたいこつ)を骨折して入院したり、その間に体が弱って認知症が進んでしまったりして始まることもある。

 こうしたときに、介護保険制度や介護休業/休暇制度などの使える制度やサービスを知っているか知らないかで差が出る。

 どうしたら介護保険サービスを利用できるのか。介護休業の条件はどのようなものなのか。そもそも自分は使えるのか。それらを知らないままに慣れない介護に時間をとられ、ほかに時間をとれなくなってしまううちに、誰にも相談できずに追い込まれてしまうケースも少なくないのだ。

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