気を遣っているのに、気を遣っていると感じさせず、相手を心からリラックスさせる達人です。

 僕は、そういう人に出会うと「ああ。こういう気の遣い方ができる人になりたい」と心底思いました。

 今、そうなっているか自分では分かりませんが、僕が人と出会う時に大切にしている点です。

 ですから、ママレモンさん。

「少し無理して気を遣ってる時もある」と書かれていますが、「無理」は必ず伝わります。無理が伝われば、ママレモンさんが目指す「気持ち良い関係」は生まれないと思います。

 言わずもがなですが、ママレモンさんが夫の前では「のびのびと暮らせて」いるのは、もちろん、気を遣うことに無理してないからですね。

 で、ママレモンさん。「気を遣っているのに気を遣っていると相手に感じさせない」のは、「気を遣っている」ことを上手に隠すことではないと思います。「無理をして気を遣わない」ということで、それはつまり、「相手との会話を上手く楽しむ」とか「自分なりの楽しみを見つける」「そもそも、必死になることをやめて、リラックスして相手と接する」ということだと思います。

 ただし、嫌な相手とか理不尽なことを言う相手とどうしても友好なフリをしなければいけない時は、「無理して気を遣う」というより、「嘘も方便」とか「おべんちゃら」とかのレベルだと思います。

 そうではなくて、ママレモンさんの書く「気持ち良い関係」になりたい相手、「思いやりとして、気遣いしたい」相手の場合には、ママレモンさんがリラックスし、お互いの関係を楽しむことがとても大切なんだと思います。

 大丈夫です。少しずつ、気を遣う時の無理が減っていけば、相手との気持ちよい関係は間違いなく育っていくと思います。

 肩の力を抜いて、やっていきましょう。僕も、日々、そう思いながら、一人一人と話しているのです。

■本連載の書籍化第2弾!『鴻上尚史のもっとほがらか人生相談』が発売中です!

著者プロフィールを見る
鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

鴻上尚史の記事一覧はこちら