「友達はまったくいないですね。以前は音楽を聴くこともあったのですが、今はそれもなくなりました。本も読まないし。一緒にお笑いのテレビを観ていても、私はゲラゲラ笑うんだけど、弟はニヤリとするだけ。『声出して笑え、笑え!』って言うんですけどね」(美奈さん)

 どうして、慎吾さんの親は今まで何も手を打たなかったのだろうか?

「さぁ……。たぶん、母は正直、弟が家にいてくれてうれしいという気持ちもあるんだと思います。父の出張が多かったので、ひとりで暮らすより心強かったはず。7~8年前に父が骨折して入院したときも、弟が家にいてくれるから安心だと言ってました。それに、小さい時から母は弟には甘かったですね。今でも私が弟に何か言うと、すぐかばおうとするんです」(同)

■    「どうなってんの?」両親にも腹が立ってキレたが…

 しかし美奈さんは、姉として黙っていられない。

「実家に帰るたびに、『どうなってんの?』『なにやってんの?』とつい弟を問いただしてしまいます。でも彼は口をつぐんだまま。何も言わず、何もしようとしない両親にも腹が立って、この間は思わずキレてしまいました」

 大泣きしながら家族に向かって「あなたたちはみんなおかしいよ!」と訴えたあと、部屋にこもって泣き続けてしまったという。

「そんな私に両親はおろおろしていましたが、結局何も変わらず。翌日からはまた同じ日常が繰り返されるだけでした」(美奈さん)

 両親はいま、70代。生きている限りは弟の食事を作り、面倒をみてくれるだろう。しかし弟が一生遊んで暮らしていけるほどの貯蓄はない。

「両親がいなくなったら、私が弟の面倒をみるしかないでしょうね。私がいるのに生活保護を受けさせるわけにもいかないし。もう、覚悟しています」(同)

 美奈さんはきっぱりと言った。

「自分の幸せを第一に考えて」と他人が言うのは簡単だが、そんなふうに単純にわりきれないのが家族というもの。仲のいい家族ならなおさらだ。

 実は、美奈さんはつい数カ月前に、長年付き合っていた男性と別れてしまったという。

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この先どうするつもり?と聞くと母は…