12月現在も、“鬼滅”の公開初期に予告編を流した『STAND BY ME ドラえもん2』や『新解釈・三國志』などが好調だといい、今も好循環が続いているようだ。

 とはいえ、やはりコロナ禍の影響は甚大で、手放しでは喜べる状況ではない。

「今年の洋画は、多くの作品の上映が先送りされ、壊滅的です。一部の邦画がヒットしましたが、映画業界全体が盛り上がらないと、やがて立ち行かなくなります。来年は洋画も復活して、いろんな映画にお客さんが入ってほしい」(同)

 CDB氏は、『鬼滅の刃』の公開初週の興行収入(土日)が、日本を除く全世界の興行収入を合わせた金額より多かったという報道(10月20日付のニューヨーク・タイムズ)を引き合いに出し、「日本の映画界の特殊性」を指摘する。

「世界の映画産業が壊滅状態の中、日本の映画界はかなり復活できている方なのです。ハリウッドが大作の公開を片っ端から停止したことで全世界の映画産業が“鎖国状態”にならざるを得なくなったため、もともと鎖国のように国内で作品を回していた日本映画界は、他国と比べれば平常営業できている。マンガという原作供給エンジンを持ち、“鬼滅”や“今日俺”で産業を回せる日本映画界は、まだマシな状態なのです」

 そして、今年の映画業界についてこう総括する。

「洋画がこれほどランキングから消えた年は、映画史上なかったのではないでしょうか。一方で、邦画では予想外の現象が次々と起きた。鬼滅の大ヒットも事前の分析以上でしたが、実は『事故物件』も今世紀ホラー映画の記録を更新する“予想外”のヒットになりました。亀梨和也さんと新進女優の奈緒さんの演技が素晴らしく、脚本もよく練られた良作でした。しかし、まさか『リング』や『呪怨』といった日本ホラーの人気シリーズを、突然現れた単発作品が抜くとは誰も予測できなかったはずです。今年は、『この映画ならこれくらいの数字だろう』という予想を超えることが次々と起きた年でした」(同)

 いまだに世界が混沌とするなか、来年も映画界は予想外の現象が起こり得る。ぜひ「洋画不在」の状況を覆すようなヒット作が生まれることを期待したい。(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)