こう語るのは、ツイッターアカウント(@C4Dbeginner)で映画評論をつぶやき、5万人超のフォロワーを獲得しているCDB氏だ。同氏は大人だけでなく、低年齢層にリーチしたことにも着目する。

「『今日から俺は!!』で驚いたのは、映画館に親子連れの小学生の姿がすごく多かったことです。不良高校生の物語なのに、まるでクレヨンしんちゃんのように低年齢層にウケている。ギャグもひねったシュールなものではなく、ものすごくオーバーアクションでわかりやすい」

 配給元の東宝・宣伝担当者も「“今日俺”はファミリー層にも人気で、首都圏だけでなくローカルでも、全国津々浦々でお客さまが入ってくれた」と振り返る。

 確かに同作は、従来のヤンキー映画と比べ、子どもにも親しみやすいつくりとなっている。格闘シーンは多いものの残虐な描写はなく、登場人物らが恋愛に奥手のため性描写などもない。

 それに加え、映画業界全体の事情もヒットを後押ししたようだ。東宝宣伝部の担当者は次のように話す。

「作品の力がもちろん大きいですが、“今日俺“が公開された夏の時期は、新作がほとんど公開されていなかった。鬼滅と同じで、スクリーンを確保しやすかったことも一因だと思います。4月の緊急事態宣言後、邦画の大作で公開されたのは“今日俺”が最初でした。コロナ禍で公開を延期する選択肢もあった中で、上映を決断してくれた制作サイド、感染対策を徹底しながら上映してくれた映画館に、配給元としては救われた形です」

 新型コロナの感染拡大で映画界に激震が走ったこの1年を、東宝はどう見るのか。

「今年は“今日俺”や“鬼滅”のヒットに助けられましたが、ジブリ4作品のリバイバル上映にも救われました。6月は、新作で上映できるものがなかったので苦しい状況でしたが、映画館を助けるために、とスタジオジブリさんが協力してくれたのです。4作の再上映で、26億円超のヒット。ジブリ、今日俺、鬼滅のおかげで『映画館に行ってもいいのだ』という機運が作れたことは大きいですし、次の客足につながっています」(東宝・宣伝担当者)

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“鎖国”で生き延びた日本の映画界