さらに中居は、「SMAPの再編成はあるのか」というきわどい質問には、「V6に入ってV7になるかも」とおどけてみせ、「復活の可能性」について聞かれた際には「1%から99%」と答え、誰も傷つけず、嫌みにも取られない言い方で切り抜けていた。

「内容的には、『分からない』と同じなのですが、印象はまるで違います。記者は具体的な言葉が出てくれば記事にしやすいわけですから、結果的に、同じ質問をさせないことができた。相手の立場を理解し、お土産を作ってあげることが大事だということを分かっていたのだと思います」

 長年のキャリアで培ったMC力で場を好転させた中居。それに対して、不倫で謝罪に追い込まれた俳優の東出昌大の会見(3月17日)は、自身のキャリアが生かせなかった残念な例だという。

「こちらは今年のワースト2といえる会見でしょう。『(唐田さんと奥さんの)どちらを選ぶのか』という問いに対して、一瞬の間があった。あの場面での間は、迷いがあることを疑わせてしまうので、絶対に作ってはいけない。迷いがあっても、彼の演技力で徹底的に役に徹するべきでした。迷いがぬぐい切れていないから、役への入り込みが中途半場で、芝居じみてしまっていた。もっと感情を揺さぶらせる魂のこもった演技で、切り抜けてほしかったです」

 今年は「良い会見がなく不作の年だった」ため、鈴鹿さんから「ベスト2」は挙がらなかった。しかし、安倍晋三前首相の辞任会見(8月28日)は、平均点以上はあったという。

「服装も話すスピードも、辞任会見にはぴったりで、辞める理由もきちんと説明していた。ただ、どこから見てもスキのない完璧な原稿を読み上げた、という印象だったことが残念でした。ミスもないけれど味もない、印象に残る言葉が一つもない会見でした。8年近く首相を務めてきた歴代最長政権なのですから、最後くらい、自身の感慨や周りの人に対する感謝など、自分をむき出しにするような言葉を発してほしかったですね」

 コロナ禍に見舞われた今年は、各都道府県の知事による会見が目立った年でもあった。

「知事の会見はどれも真意が伝わりにくいものでした。新たな感染対策を発表する際、『経済と感染抑制の両輪のため』の一点張りで、数多ある対策方針のなかで、なぜこの政策を選んだのか、何が期待できるのか、誰も論理立てて理由を説明できていない。海外に目を向ければ、ドイツのメルケル首相などは、複数の選択肢の中からその政策を選んだ理由を、数字を使って合理的に説明していました。大きな影響を及ぼすようなことなのに、日本のリーダーは説明不足です」

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渡部がやるべきだった“切り抜け方”は?