期待された選手が瞬く間に消えてしまった例は、阪神では数えきれない。関西だけでなく日本中にファンを抱える超人気球団。取り巻く環境としっかり向き合うことも必要になる。

「阪神選手への注目度は他球団と比べ物にならない。比較される巨人は一部人気選手は同様だが、1軍半クラス以下はそこまでではない。阪神は2軍選手でもCM依頼やサイン会など営業案件の依頼がある。また食事など個人をサポートする『タニマチ』や、様々な形で選手に近づきたい人が後を絶たない。大山なんて、今やスーパースター扱い。特に関西ローカルの中小企業からは、かなりの数の問い合わせが殺到している。勘違いしない方が難しい」(在阪広告代理店関係者)

 加えて、編成面にも心配がつきまとう。阪神は毎年のように他球団の主力級選手や外国人選手を補強する。多くは打力重視の補強だったため、その選手たちのポジションが一塁手、三塁手などに限定されてしまう。必然的に大山の守備位置が流動的になってしまうのだ。

「ポジションが重複する選手が多過ぎる。大山は足も遅くなく、グラブ捌きも柔らかい。そうなると守備だけに関して言えば、『便利屋』になってしまう。外野手はおろか、遊撃手の練習をしたこともあったほど。大山の打力は魅力で試合に使いたいのはわかる。しかし失点を抑えないと勝てないわけだから、守備面も疎かにはできない。慣れないポジションを守ることで打撃に影響を及ぼさないかも心配。矢野監督も頭が痛いはず」(阪神担当記者)

 大山が打てるようになったから生じた悩み。しかし「二兎を追う者は一兎をも得ず」ではないが、打撃と守備の両方が共倒れになることが最も危険なことだ。

 岡田彰布、今岡誠、濱中治……。阪神が強かった時期には、必ずのように右の強打者が君臨している。久しぶりに頭角を表してきた同様のタイプ。大山の活躍次第では、虎の夢に手が届く可能性も高い。今年の勢いそのままに、更なる進化を願いたい。