真剣な受け答えが自然と笑いに変わってしまうものもある。

 全日本の大森隆男と征矢学のタッグ『GET WILD(ゲット・ワイルド)』のものは秀逸だ。天然な返答もあり、一方で明かにネタを仕込んだやり取りもある。常に周囲を笑いに巻き込み、引きつけるタレント性はさすがだ。

征矢「(ワイルドと思う人物は?)オレか、そうだな、寺門ジモン。毎日、山行って生活してるんですよ。寺門ジモン、知らねえだろ」
大森「知ってるよ、肉食ったりしてるのは。俺は藤岡弘」

『ワイルド』論争では意味不明な問答を繰り広げた2人だが、プロレスの技量も高い。

 大森はアニマル浜口ジムで鍛えて、ジャイアント馬場時代の『王道』に入団した本格派。征矢は坂口征二の坂口道場でから藤波辰爾の無我ワールド・プロレスリング入りしデビュー。戦っても組んでもスイングした2人は、12年プロレス大賞最優秀タッグチーム賞を獲得した。

「覚悟しとけよ、ビッシビシ行くからな!」

 魔界倶楽部総裁・星野勘太郎のものは客を巻き込んだ名人級問答。試合介入など、存在感を存分に見せつけた後、高らかに宣言することで場内は沸いた。

 星野は新日本の名脇役、突貫小僧として活躍。米国修行時代は鬼軍曹・山本小鉄とのタッグ『ヤマハ・ブラザーズ』で暴れ回った。またアントニオ猪木と組み、70年の第1回NWAタッグリーグ戦優勝を果たしたことも有名。『ヤマハ・ブラザーズ』としてもIWA世界タッグ王座を奪取するなど、実力は折り紙付きだ。

「ビッシビシ!」は新日本プロレスのコーチ時代の言葉が起源。「ビッシビシ、バッシバシ行く……!」と言っていたものが、魔界倶楽部時代に定着、認知された。乱入後に「ビッシビシ撤収するぞ!」と発言するなど、派生型もある。人気アーティスト『ゆず』がライブなどで連呼していたことから、プロレスファン以外にも市民権を得た。

「IWGPは遠いぞ」

 新日本のエース棚橋弘至。低迷期から団体を背負い、現在の繁栄を最先端で引っ張って来た男の名言を引き出したのは、オカダ・カズチカとのタイトル戦をめぐる中での問答がきっかけだった。

外道「受けんのか? 受けろ、早く!。時代変えられるのが怖いか? 怖いのか?」
棚橋「逃げないけど潰すよ。身体でわからすよ」
外道「潰せるもんなら潰してみろ! やるんだな、じゃあ?」
棚橋「やってやるよ」
外道「受けんだな。レインメーカー対過去の逸材決定だ」

 12年1月5日、前日の東京ドーム大会でIWGP王座を奪回した棚橋の会見。オカダが乱入しタイトル戦開催を無理やり認めさせた。現場にいたオカダは一言も発さなかったが、マネージャー役・外道と棚橋のやり取りには、実にプロレスらしさがあった。

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今後も“名問答”は生まれるのか?