組み立てステップは70から80ほどもあり、カメラの骨格となる部分にファインダーやシャッター、撮像素子などの部品が組み付けられていく。

 特に難しいのはファインダーまわりの調整で、かなり習熟度の高い作業者しか行えない工程という。チャートの指標を目視で確認しながら視野率が100%になるように微調整を行っていく。調整の良否は測定器によって自動的に判定され、結果は作業者の前にあるモニター画面に表示される。機械で判定することによって、作業者ごとの調整のばらつきを最小限に抑えられるわけだ。

 シャッターユニットの組み立ても見るからに難しそうだ。小さなユニットなのに、部品の数は百数十点にも及ぶ。極めて小さな部品を薄いシャッターの羽根に取り付ける際、それを工具でつぶす「羽根がしめ」を行うのだが、うまくつぶせないと、性能に悪影響が出てしまう。D4で40万回、D800/D800Eで20万回を超えるシャッターの耐久性を持たせるためには職人芸的な技術が要求されると、説明された。

 シャッターとは対照的に、シンプルだが重要なパーツがバヨネットマウント。それを作るための自動化されたラインが24時間体制で動き続ける。素材となるのがステンレスや真ちゅうをプレス加工で形を整えた「スタンプ材」で、これが削り出されると、あの見慣れた形のFマウントが出来上がった。

「ニコン品質のカメラを海外メーカーが作ることはないと思います」

 カメラの製造というと、熟練した職人技によって支えられているというイメージがあった。しかし、斎藤社長はそうあるべきではないと言う。

「カメラは工業製品ですから、従業員であれば誰にでも作れることを目指しています。しかし、官能的な性能を求められるところもあり、そういう作業はある程度時間をかけなければ習得できません。またカメラとして製品の差別化を図っていくにはそれなりのノウハウを入れていかなければならない。そこがなかなか難しいところです」

 生産にはさまざまなノウハウが必要となるが、それらがすべてそろわないとカメラは作れない。

「検査機器や金型など、専門メーカーで作れるものはそれを利用していますが、ニコン固有のものはほとんどグループ会社内で作っています。ですからニコン品質のカメラを海外メーカーが作ることはないと思います」
               

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