各球団主力選手が大型長期契約するのを目の当たりにしたことも、山田には大きな影響があったのではと推測される。

「山田本人もトータルで考えた。冷めた目で見れば、噂された巨人などの方が条件は良い。でも巨人へ移籍した外様選手への風当たりが強いのは知っている。ヤクルトなら自分のペースが守れるし引退後の心配もない。巨人や阪神ほど数は多くはないが熱狂的なヤクルトのファンからも支えられている。後々を考えればリスクを冒すことはない。お金が価値基準ではなかった。広い意味で『ヤクルト愛』が勝ったということ」(ヤクルト球団関係者)

 お金で買えないものはないのが真実だ。しかし経済危機など、お金の価値が一夜で暴落することが多い現代でもある。そして夢だけでは生活できないのは紛れもない現実であり、それを考慮するのは当然である。

 野球選手にとっても『お金』『夢』が第1基準ではなくなった部分もある。現実を見極めて冷静な判断、選択をする。今後は1球団生え抜きで生涯を全うする選手もさらに増えるかもしれない。

『現実思考』こそが、チームへの献身性、チーム愛かもしれない。