――元奥さまから家事や育児で不満を言われたことはなかったのですか?

西牟田:それは、もちろんあります。これは今でも後悔しているんですが、寝かしつけと夜中のミルク作りは元妻に任せっぱなしでした。僕は夜に原稿を書くタイプで、とにかく夜は仕事モードになってしまう。元妻から「たまには(寝かしつけを)代わってよ」と言われていたのですが、仕事を理由に断っていました。当時は自宅の近くに仕事部屋のアパートを借りていたので、執筆に集中したいときは、夜は自宅を出てそっちに行ってしまうこともありました。これには、元妻は相当不満をため込んでいたと思います。

――寝かしつけの大変さはやってみないとわからないので、乳幼児を持つ夫婦の火種になりがちですが、これだけで離婚ということも少ないかと思います。他に何か思い当たることはありますか?

西牟田:一度決定的なことがあったのは、3・11の東日本大震災のときです。娘はまだ0歳だったのですが、ちょうどその年の4月から元妻が仕事復帰するので保育園に入ることが決まっていました。一方で、僕はライターとして「これは福島に行くべきだ」と思い、4月上旬から福島出張を決めていました。元妻からは「保育園の入園式には一緒に出てほしい」と言われたのですが、僕は「もう決まった仕事だから」と仕事を優先してしまったんです。保育園に入ってからは、元妻も働きながらの子育ては大変だったようで、仕事を辞めて、出張がない仕事に就きました。後で知ったことですが、このとき元妻は義母に「このままでは(結婚生活を)やっていけない」という相談をしていたようです。でも僕は「仕事のことは(妻は)理解してくれているはずだ」と思っていて、相変わらず出張に行く生活を続けました。

 結局、僕は自分の仕事のペースは落とさずに、肝心なところは妻任せにしていたんです。子どもが生まれても僕はどこか恋人気分のままというか、妻への愛情があるから大丈夫だろうと考えていました。だから、元妻から言われる子育ての不満にもきちんと向き合あわず、仕事優先のスタンスで生活してしまっていたのです。

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突き付けられた「別れの条件」