高校時代はエースで4番。98年夏の甲子園準決勝、横浜高戦は、7回まで6対0とリードしながら、まさかの逆転サヨナラ負け。9回からリリーフして奇跡の逆転劇を呼び込んだ松坂に対し、サヨナラ打を打たれ、マウンドにうずくまった寺本……。両者の明暗を分けた試合は、今でも屈指の名勝負として語り継がれている。

 同年のドラフトロッテに4位指名された寺本は、1年目から1軍登板をはたしたが、制球難から伸び悩み、02年に打者転向。同年7月30日のイースタン、西武戦では、右肘を痛めて2軍調整中の松坂との対決も実現している。9番ライトで出場した寺本は3回2死、松坂のチェンジアップを空振り三振。打者9人から6三振を奪い、3回をパーフェクトに抑えた松坂は、寺本との対決で投じた149キロがこの日の最速だった。そして、これが両者のプロでの最初で最後の対決となった。

 06年、1軍で2試合出場も、6打数無安打と結果を出せなかった寺本は、10月4日、自ら球団に退団を申し入れ、任意引退となった。

 この年、松坂はレッドソックスにポスティング移籍をはたし、メジャーという新たなステージへと進んでいった。

 月日はめぐり、松坂も来季は選手生命を賭けた“戦い”に臨むことになる。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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