「最近は練習中の目の色が変わったように見えた。早出や居残り練習もやって、徹底的にバットを振り込んでいた。しかし気分転換というか、ちょっとした気の緩みだったのかな。最初に話を聞いた時には信じられなかった。伊藤は大学で主将まで務めていて、人間的には真面目で考え過ぎるほど。気分転換が悪いとは言わない。でも世間が大変なことになっている時期だったから、少し考えれば分別はついたはず。疲れていた時期だったのかな」(阪神関係者)

「阪神に戦力外を通達されてから今日に至るまで、練習の環境や、気持ちの持ちようでなかなか難しい所がありましたが、多くの人の声援、応援により覚悟を持って今日という日を迎えられました。独特の雰囲気の中、めちゃくちゃ緊張して前半は特にガチガチで、地に足がついていないような状況でしたが、皆さんの声援のおかげで何とかツーベース1本を打つことができました。間違いなく応援の力が後押ししてくれたヒットだったと思います。」(伊藤・インスタグラム)

 トライアウトは無観客で行われた。しかし新庄剛志の参加もあり、メディアでは大きく取り上げられた。熱狂的な新庄信者が球場に隣接する日本青年館ホテルから声援を送ったことも話題になった。阪神時代、甲子園の大観衆の中で当たり前にプレーしていた伊藤にとって、異質空間だったことに違いない。しかし当日のコメントは本音であると思われ、必死さや感謝という純粋な気持ちが表れている。

「今後についてはまだ決まってはいませんが、現時点で自分のやれることはやり切りました!これからも、他球団でプレーできることを信じて、トレーニングを続けていく予定です」(伊藤・インスタグラム)

 打撃に関しては誰もが認める技術を持つ。DH制のあるパ・リーグには、獲得を検討している球団もあるという。高橋由伸と並ぶ『慶応大学野球部の歴史に残る好打者』と呼ばれた男の野球人生、果たしてどうなって行くのだろうか。できることならもう少し見ていたい気もする。