プロ野球の12球団合同トライアウト。毎年、主に戦力外通告を受けた40~50人程の選手が参加するが、日本プロ野球機構(NPB)の球団に獲得されるのは数人という狭き門で、「事実上の引退試合」との指摘もある。その厳しい現実の一方で、NPB復帰を諦めず複数回、トライアウトに臨み夢破れた選手たちもいる。何が彼らを突き動かしたのか。過去に2年続けてトライアウトに挑んだ元巨人の外野手に、思いを聞いた。

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 多くの選手が生き残りをかけて臨むトライアウトだが、育成契約を含めNPB球団への道が開けたのは2019年は3人(参加43人)、2018年は5人(同48人)、2017年は3人(同51人)。2019年からは同一選手による参加を2回までとする制限が設けられ、ハードルも上がった。

「トライアウトは基本的には選手を『発掘する』場ではなく、獲得するかしないかを検討していた選手について、十分な動きができるか確認するのが目的です。他球団を戦力外になった選手で、積極的に獲得したい選手にはトライアウト前に水面下で接触するので、そういう選手はトライアウトに出ないケースが多いと思います」と語るのはセ・リーグの球団関係者だ。個々の選手のモチベーションもさまざまで、活躍の場を得ようと全力プレーで必死にアピールする選手もいれば、一軍で活躍した元投手は「半分以上は諦めていて、野球人生の最後のけじめとして参加した」と素直に認める。

 あまりに厳しい現実――。

「(NPB復帰が)難しいことは分かっていました」

 こう振り返るのは、元巨人の外野手、高橋洸氏(27)だ。2017年に戦力外通告を受け、その年と翌2018年のトライアウトに参加した。

 日本文理高(新潟)から2011年のドラフト5位で巨人に入団した高橋氏。俊足強打の外野手として期待されたがケガが続き、2013年のシーズン後に育成選手として再契約した。その後は足のスペシャリスト・鈴木尚広氏に弟子入りし、2017年には三軍で31盗塁を記録するなど結果を残しつつあったが、そのシーズンオフに2度目の戦力外通告。一軍での試合出場は一度も果たせなかった。

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スカウトされたのは自衛隊や警察