近鉄時代の仰木彬監督も、整理リスト入りした控えの内野手を救済したことがある。「もう1年在籍すれば、ちょうど10年になって、選手年金(12年3月に破綻)が貰えるから」が理由だった。

 その選手は「仰木さんは何も言わなかったけど、ベンチで声を出しつづけ、ムードを盛り上げていたのを、ちゃんと見てくれていたのでは?」と回想している。

 阿波野秀幸や野茂英雄のように黙っていても結果を出す主力には伸び伸びとやらせ、それ以外の選手には、冷淡な一面も見せたといわれる仰木監督だが、プレー以外でもチームに貢献したと認められる選手には、このような温情を示すこともあった。

 ベンチ要員でも、心がけひとつで重要な戦力として評価されるのが、野球の妙味である。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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