このとき、彼は約10秒も沈黙したあげく、

「お相手のこともあるので、また、私の心の内を今ここでしゃべることは、妻を傷つけることになると思いますので、申し訳ありませんが、お答えできません」

 という答えを絞り出した。これは必ずしも正解ではなく「どちらのことも傷つけることになるので」などの言葉を添えるべきだったと思うが、あの沈黙自体は悪くなかった。本気で苦しむ姿が、見る者の怒りを多少は鎮めるからだ。この会見自体、彼が考え込む時間が異様に長く、それがせめてもの真面目さをかもしだしていたといえる。

 そこへいくと、渡部はしゃべりのプロだ。ただ、事前から用意していた言葉ならよどみなく話せるのに、答えにくい質問が出た途端、しどろもどろになってしまう。そこで必死に考えてみせればいいのだが、芸風なのか、人間性なのか、考えるより先に当たり障りのない言葉で埋めようとする。それゆえ、取り繕っているだけという印象が強く出てしまった。

 特に前半、女性リポーターたちが中心となって、やや感情的な、そのぶん、女性的な本音がにじみでるような質問をぶつけていたところでは、もうぐだぐだだった。「多目的トイレ」を不倫に利用したことへの批判にもただありきたりな言葉で謝るばかり。当時も今も、それほどまずいことをしたという感覚はないのではと思わせるほどだった。

 また、半年間、謝罪会見をしなかった理由については、騒動直後に「週刊文春」のインタビューを受けたことに触れ、

「すべてをお答えして謝罪することで、まぁ、そうですね、収束するんではないかと、今考えるとですね、大変甘い判断と言いますか、本当に甘く考えてたというか、要は記者会見をしなくて済むんではないかという思いがありました」

 という感覚だったことをポロリ。

 さらには、やたらと連発される「本当に」というフレーズが逆にうそくさく感じさせてしまうという悪循環を招いたのである。

 そんなこんなで、これではもうマイナスでしかないという状況が続き、せめて妻の佐々木希や相方の児嶋一哉が同席していれば、助け舟も出してくれるだろうに、などとも感じてしまった。が、単独での会見なので、そういうことは期待できない。もはや、この撤退戦は全滅に終わるのではと思われたほどだ。

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会見の中盤から現れた「援軍」