■ 新しい洗剤の開発のポイントは?

 このせっけんカスをなくすために、長年、洗剤の開発が行われてきました。リン酸塩を加えることによりせっけんカスを生成させない方法が開発されましたが、大量のリン酸塩が川や海に流れ、富栄養化(栄養塩が豊富に存在する状態、プランクトンが異常発生、赤潮や青潮の発生を起こす)をもたらし、大きな環境問題になりました。そこでリン酸塩を用いない無リン洗剤が開発されました。

 せっけんとは異なる合成洗剤の代表格は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、せっけんの場合のようなせっけんカスがほとんど生成しない、また安価なこともあって石油化学の発展とともに急速に使われるようになりました。これ以外にも多くの洗剤が開発されていますが、これらについても別の稿に譲ります。

■ 日本にも水の硬度が高い地域がある

 飲料水として水の硬度を気にされる方も多く、レンタルウオーターサーバーを使っている方も多いことでしょう。また、市販のミネラルウオーターにはさまざまな種類の水があります。

 前述のように、洗濯に使う水、硬水・軟水とせっけん・洗剤との関係は極めて化学に関係しています。日本はほとんどが軟水地域として分類されていますが、筆者は硬度が高い地域で育ちましたので、大昔、大量のせっけんカスに悩まされた記憶があります。

「水と洗剤」、現在は、多くの人がほとんど何の気にも留めずに生活をしていますが、水一つとっても、考えさせられることが多くあります。身の回りの生活は化学と密接に関係しています。

<プロフィール>
和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している