硬水と軟水の差は、料理(日本料理と西洋料理)、飲み物(お茶、コーヒー、紅茶など)、美容(肌、髪など)等、身の回りの生活と密接に関係しています。面白いことを一つ。欧米旅行で気をつけることの一つは下痢ですが、理由は、マグネシウムを多く含む硬水にあり、便秘解消効果がてきめんに効くからです。ちなみに病院で処方される便秘薬は酸化マグネシウムです。これらについては稿を改めたいと思います。

■ 水道水を温めると硬水が軟水になる

 水道水に含まれる代表的なミネラルはカルシウム(その他にナトリウム、マグネシウム、カリウムなど)です。カルシウムイオン(Ca2+)として存在しますが、正確にはCa(HCO3)2として水に溶けています。

 鍾乳洞ができるのは岩石(CaCO3)の隙間に、二酸化炭素(CO2、炭酸ガス)を含んだ水が流れ、Ca(HCO3)2となって岩石が溶けるからです(反応1)。もちろんこれには長い年月が必要です。鍾乳洞に入ると、天井から鍾乳石のツララをよく見かけます。これは、岩石が溶けるのとは逆反応、すなわちCa(HCO3)2を含んだ水が天井から滴下する間に、二酸化炭素が空気中に放出されると元の岩石・CaCO3に戻るからです(反応2)。長い年月をかけて、これが繰り返されると石のツララが成長します。

 水道水を温めた時の化学反応は、反応2に相当しますので、水に溶けない石ができることになります。同じやかんや電気式ポットを使って長期間お湯を沸かしますと底に石がたまります。軽石ですがこれが水あかの正体です。したがって、水を温めると結果的に水中のカルシウムの濃度が低下しますので、より軟水になります。硬水を軟水にする、家庭でできる簡単な方法は、水を煮沸することです。

■ 洗濯の原理とマヨネーズの共通点

 洗剤に含まれる界面活性剤とは、普通は混じりあわない油と水を細かいつぶ状に分散させて混じりあった状態(乳化)にさせる物質で、親水性部分(水と親しくする部分)と親油性部分(油と親しくする部分、疎水性ともいう)をあわせもつ構造をしています。

次のページ
どうしてマヨネーズは均一なのか