例えば結婚した場合、配偶者の収入によりますが、扶養となれば最大で年38万円を収入額から差し引くことができます。生命保険や地震保険に入っていれば、その掛け金から計算して一定額が控除されます。

 扶養に入った、または減った場合など申告すればすぐに反映することも多いのですが、保険料控除は、毎月の給与では反映されていません。また給与が毎月必ず一定なら問題ないのですが、実際は昇給や賞与で変動するため、どうしても毎月の控除額と正しい税額とが合わなくなってしまいます。

 つまり、一年間に支払うべき税額と実際に毎月の給与から預かって払っている税金にズレが生じてしまうのです。これは源泉徴収税額表を基に正しい計算をしていても起こります。年末調整は、まさにこのズレを「調整」するのです。

■場合によっては年末調整で給与が減ることも

 会社員は、扶養家族や各種保険料額などを書き込む書類を提出し、それをもとに会社が計算し修正して、ズレの分の金額を給与に反映させます。このため年末調整の書類は正確に記載することが大切です。

 給与の総額から本来差し引かれるべき控除などをすべて引いた金額で1年間の所得を計算しますが、その結果、例えば年30万円を所得税として支払っていた場合でも計算すると実は29万円だった場合、差額の1万円が戻ってくるのです。

 年末調整はお金が返ってくるイメージがある人が多いと思います。確かに調整をすると、 だいたい税金が戻る「還付」となるので、 年末の給与は普段より多くなりがちです。

 ただ子どもが就職して独立したり、扶養する家族がパート・アルバイトなどで一定額以上の収入を得た場合など扶養人数が減った、本人が大きく昇給した、 賞与が多かったなどの場合は「不足」となり、 手取りがいつもより少なくなることもあります。

 特に子どもが扶養から外れたことをすぐ会社に申告せず、年末調整時に申告する場合などは控除額も大幅に変わるので注意が必要です。

■「基礎控除」が引き上げられた分、「給与所得控除」が引き下げられた税制改正

 今年の年末調整にかかわってくる2020年の税制の改正には大きく以下のものがあります。

●基礎控除の引き上げ
●給与所得控除の引き下げ
●所得金額調整控除の創設
●寡婦(寡夫)控除の適用要件の見直し

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