森田校長は昨年春に同校に着任すると、その年の秋に都内からヨガインストラクターを招き、3年生の全4クラス154人を対象にヨガ体験を実施した。ヨガの基本的な呼吸法や瞑想(めいそう)を学んだあと、「三角のポーズ」や「木のポーズ」など、いくつかのポーズに挑戦した。そのうちの1クラスはその後1週間にわたって毎日の朝の会で、呼吸法と10種ほどのポーズを組み合わせた20分程度のヨガプログラムを続け、ヨガの健康に対する効果を測定した。

 1週間ヨガを続けた生徒たちからは「肩が軽くなった」「これまで1時間目の授業はとても眠かったが、ヨガをやってすっきりしたまま授業を受けられた」「初めは朝のヨガをストレスに感じていたが、後半は慣れてきて気分がよくなった」などという感想が聞かれたという。

 同校でヨガの指導と効果測定の調査を行った、慶應義塾大学環境情報学部講師でヨガインストラクターの加藤亜希子さんは、生徒たちへのヨガの効果についてこう話す。

「ヨガというと、ポーズをとるフィットネス的なイメージが強いかもしれませんが、呼吸に意識を向けて瞑想することで、心身のバランスを整えるという重要な側面もあります。中学3年生は思春期の上に受験を控えていてストレスを感じやすい時期なので、瞑想によってそうしたストレスをコントロールできるようになるということも伝えました。今回の調査では数値的には有意な結果は得られませんでしたが、『この1週間でだるいと思うことが減った』といった声も聞かれ、ヨガの効果を感じられた生徒さんが多かったようです」

 加藤さんによると、米メリーランド州の小学校では、児童に瞑想やヨガを行わせる取り組みを始めたところ、問題行動が減少したという報告があるという。

 森田校長は「ヨガのおかげかどうかはわかりませんが」と前置きしつつ、「最近は学校全体が落ち着いているように感じます。大声を出したり、すぐ興奮したりする生徒が少なくなりました。教員も同じように落ち着いて指導にあたれています」と話す。

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