最後に番外編。ドラフト指名直後に大ケガをして、入団会見にギプス姿で現れたのが、95年のヤクルト1位・三木肇だ。

 この年、福留孝介(PL学園)の抽選に敗れたヤクルトは、外れ1位の沢井良輔(銚子商)の抽選でもロッテに敗れ、外れ外れ1位で上宮高の走攻守揃った大型内野手・三木を指名した。

「信じられない。この僕が1位なんて……」と驚いた三木だったが、「外れ外れを1個ずつはがし、最後に本物の1位と言われるよう頑張りたい」と宣言した。

 ところが、1位指名に張り切り過ぎたのか、ドラフトから8日後の11月30日夜、下半身を鍛えるため、石段でダッシュを繰り返しているときに、滑って転倒。左手首を骨折してしまった。その後、全治3カ月の重傷と判明し、整復固定手術を受けた。

 このため、12月15日の入団発表にはギプス姿で出席する羽目になり、野村監督から「前代未聞や!」とツッコミを入れられた。

 過去にも、88年の近鉄1位・米崎薫臣はソウル五輪で右手を骨折し、三木同様、ギプス姿で入団発表に出席。90年のオリックス1位・佐藤和弘も、右足ねん挫で、ドラフト当日は松葉杖姿だったから、けっして前代未聞ではないが、これらの“負傷組”の中で、後に監督にまで出世したのは、あとにも先にも三木一人だ。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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