巨人・井上温大 (c)朝日新聞社
巨人・井上温大 (c)朝日新聞社

 11月8日から29日まで約3週間にわたって行われたフェニックスリーグ。2006年以降はKBO(韓国プロ野球)などNPB以外のチームも参加していたが、今年は新型コロナウイルスの影響でNPB12球団のみでの実施となった。若手選手にとっては貴重な実戦の場であるが、その中でも活躍が目立った選手をピックアップして紹介したいと思う。

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 まずルーキーで最も存在感を示した選手となると、昨年のドラフトで目玉の一人だった奥川恭伸(ヤクルト)になるだろう。19日のソフトバンク戦で先発すると、初回に高田知季にツーランを浴びたものの、その後はしっかり立て直して5回を2失点にまとめる好投。27日の阪神戦では更に調子を上げ、6回を被安打わずか1、7奪三振で無失点という圧巻のピッチングを見せている。

 11月10日の一軍最終戦では3回途中5失点とほろ苦いプロデビューとなったが、その経験を生かしてしっかりと調整を進めてきたことが分かる投球だった。阪神戦では150キロもマークしているが、それ以上に目立ったのがコントロールと変化球の成長だ。2試合、11回を投げて与えた四球はわずかに1。決め球のフォークも低めにしっかりと決まり、イニング数を上回る12奪三振も記録している。二軍のレベルでは完全に頭一つ抜けており、来春のキャンプでも一軍帯同が濃厚だ。ダントツの最下位だったチームを救う救世主として期待したい。

 日本シリーズで2年連続の4連敗を喫した巨人も楽しみな高校卒投手が出てきた。2年目の横川凱とルーキーの井上温大だ。横川は8日の一軍戦でプロ初先発を果たし、5回1失点と好投。フェニックスリーグでもその勢いは変わらず、3試合に先発して19回を投げて自責点3、防御率1.42という見事な結果を残してみせた。高校時代はどうしても体が細く頼りない印象が強かったが、プロ入り後は着実に体力面が強化されてきているように見える。190cmの長身でありながらもフォームにギクシャクしたところがなく、ボールの角度は申し分ない。この調子を維持できれば、来季は先発争いに加わってくることも期待できる。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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横川よりも良かった井上の投球