変形性股関節症の病期は、前股関節症期から、初期、進行期、末期へと段階的に進行する。典型的な症状として、腰を揺らして歩行する「跛行」、「痛み」、「可動域の減少」の三つがある。

「なかには、自覚症状がなく、周りの人に歩き方がおかしいと指摘されて初めて受診する人もいます。痛みはかなり個人差があります。ひどくなると動作時だけでなく、安静時にも痛みが起こるようになります。また、左右の足の長さに差が生じることもあります。末期に一度痛みがひどくなっても、関節の変形が進んで動きが悪くなると、かえって痛みが少なくなる場合もあるので、注意が必要です」(山本医師)

 痛みは、足の付け根だけでなく、太ももの前側やひざ、腰に表れることもあるという。日常生活で、足の爪が切りにくい、靴下がはけない、正座やあぐら、和式トイレが困難になるなど不便を感じた場合は、股関節の動きの低下のサインだ。ひどくなる前に整形外科を受診してきちんと診断してもらい、自身の関節の状態を知っておこう。基本となるX線検査のほか、必要に応じて軟骨の変性を調べるためのMRI検査などがおこなわれる。

 病状の進行を防ぐためには、いかに股関節にかかる負担を減らして、関節軟骨の損傷を防ぐかが鍵になる。変形性股関節症はロコモティブシンドローム(運動器症候群)の一つでもあり、高齢になってから寝たきりや要介護状態になることを防ぐうえでも重要だ。

■筋肉は股関節を支えるコルセット

「痛みがあると、日頃から動かなくなったり、ストレスで食べすぎたりして、体重が増えがちです。負荷を減らすために、まず減量を心がけましょう。杖などの補助具を使った歩行や、水中歩行などは、関節にかかる負荷を減らしながら運動ができるので有効です」(渡會医師)
 また、自分でのストレッチも、股関節の可動域を広げるのに効果的だ。

 股関節の周りには、中殿筋、大腿直筋、内転筋などの筋肉や腱が取り囲み、関節をしっかり安定させている。運動療法でこれらの筋肉を鍛えると、股関節の安定性が高まる。

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放置すると進行。病院選びは?