山本謙吾医師(左)と渡會恵介医師
山本謙吾医師(左)と渡會恵介医師
股関節の痛みのデータ(週刊朝日2020年12月4日号より)※変形性股関節症の手術については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している「手術数でわかるいい病院」
股関節の痛みのデータ(週刊朝日2020年12月4日号より)※変形性股関節症の手術については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している「手術数でわかるいい病院」

 足の付け根の痛みや動かしづらさは、とくに中高年以降の女性に好発する。その多くは変形性股関節症で、放置すれば股関節の変形が進み、強い痛みや歩行障害が起こりうる。股関節の状態を確認し、負担を減らすことが大切だ。

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「股関節」は、左右の足の付け根にあり、体重を支える重要な関節だ。骨盤側の「寛骨臼」と呼ばれるくぼみに、大腿骨の丸い骨頭がはまる球関節で、動かせる自由度が高く、クルクルと動く。この可動域の大きさも股関節の大きな特徴である。

 股関節の周囲に痛みが起こる原因は、一つではない。大腿骨骨折や関節リウマチ、その他の股関節の病気などがあげられるが、最も多いのは「変形性股関節症」だ。

 股関節には歩行時に体重の約3倍、ジャンプすると約10倍の負荷がかかるという。東京医科大学病院副院長、整形外科主任教授の山本謙吾医師は、次のように説明する。

「股関節の表面は、クッションの役割をする軟骨組織で覆われています。その軟骨が加齢などによりすり減り、はがれて遊離すると、炎症や痛みを誘発します。さらに軟骨がなくなると、関節の隙間が狭くなり、露出した骨がぶつかり合って、関節のかみ合わせが悪くなります。これが変形性股関節症で、進行すれば強い痛みや、関節の動かしづらさが表れます」

■発育性の異常あり 日本人では約8割

 変形性股関節症には二つの種類がある。一つは、明らかな原因がなく、加齢や肥満などで股関節に負担がかかり発症する一次性。もう一つは、もとから股関節の形状に問題があるため、あるいは骨折やその他の病気が原因となって発症する二次性だ。日本では、後者がおよそ8割を占める。

 日本人には、発育性股関節形成不全と呼ばれる、小児期の発育障害の後遺症により、寛骨臼のくぼみの部分が狭く股関節が不安定な人がかなり多くいるという。

 埼玉医科大学病院整形外科・脊椎外科講師の渡會恵介医師は、こう話す。

「関節軟骨が正常なうちはほとんどが無症状なため、X線検査をしないと気づきません。激しいスポーツや、子育て中に子どもを抱いたり重量物を持ち上げたりして、不安定な股関節に過剰な負荷がかかると、徐々に関節軟骨がすり減ったり、寛骨臼のへりにある軟骨組織の関節唇が傷ついたりして、痛みが表れます」

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歩き方がおかしい?自覚症状のないケースも