耐震性不足を自治体に認定された「要除却認定マンション」は、総会での5分の4以上の賛成により敷地売却決議が可能になった※写真はイメージです((c)Getty Images)
耐震性不足を自治体に認定された「要除却認定マンション」は、総会での5分の4以上の賛成により敷地売却決議が可能になった※写真はイメージです((c)Getty Images)
(図表A)マンション敷地売却制度の仕組み。買受人に売却後、買受人はマンションを建て替えることもできるし、商業ビルなどほかの用途で土地を利用することもできる
(図表A)マンション敷地売却制度の仕組み。買受人に売却後、買受人はマンションを建て替えることもできるし、商業ビルなどほかの用途で土地を利用することもできる

 建替え、改修に続く、マンション再生の第三の選択肢として挙げられるのが、敷地の一括売却だ。その仕組みはどのようなものだろうか。組合の理事に選任されて困っている人や、運営に頭を悩ませている人の悩みに応える「資産価値を守る!マンション管理・修繕・建替え大全2021」(週刊朝日MOOK)から、抜粋して紹介する。

【図】マンション敷地売却制度の仕組みはこちら

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 2014年、マンション建替法が改正された際に生まれたのが「マンション敷地売却制度」です。それまではマンションの再生にあたって、建替えも改修もせずに売却する場合、民法の原則に基づいて区分所有者全員の同意が必要でした。

 しかし、戸数が多いと全員同意は困難。何も手を打てないなかで、住宅ストック(既存の中古住宅)としても機能しない状態を続けていくしかありませんでした。

■建替えのほか単純売却もしやすい

 そうした不都合を解消するためにつくられたのがマンション敷地売却制度です(図表A)。対象となるのは、耐震性不足を自治体に認定された「要除却認定マンション」です。総会で5分の4以上の賛成により、敷地売却決議が可能となりました。借家人や抵当権者の同意は不要なので、従来よりもスムーズに敷地売却を進めることができます。

 決議後は、賛成者によって「マンション敷地売却組合」を設立し、行政の認可を受け、事業を進めていく仕組みです。分配金取得計画の認可後、権利消滅期日に区分所有者の権利は同組合に移転。その後、同組合は敷地を一括して、デベロッパーなどに売却した後、解散。それ以降は、任意事業となって、希望者はデベロッパーから建替え後のマンションを購入することになります。

 なお、マンション敷地売却決議後は、マンション以外の建物にすることも可能。建替えのためにこの制度を利用することもできる一方、単純売却もしやすくなっています。

■さまざまな場面で土地活用の幅が広がる

 この制度が有効なのは、一般的なマンション建替えでは手続きをうまく進められない場合です。たとえば、区分所有のテナントビルなど集合住宅以外への建替えを計画しているときや、借地に立つマンションを所有権マンションに建て替えたいときなどは、従前のマンション建替法の権利変換の仕組みが適用できませんでした。

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