また、ここ数年は世の中の安定志向がますます強まっている。そのぶん、押しの強さや攻めの姿勢、やんちゃっぽさが売りで、とかくリスキーでもあるサバサバ系はあまり歓迎されなくなっているのではないか。

 例によってドラマシーンを見ても、今年、13年ぶりに復活した「ハケンの品格」はかつてほど盛り上がらなかった。サバサバ要素に頼りすぎでは成功しにくい状況を象徴しているようでもある。

 そのかわり、サバサバ要素にふわふわ要素を加えたものならアリかもしれない。今期の連ドラでいえば「姉ちゃんの恋人」(フジテレビ系)や「リモラブ~普通の恋は邪道~」(日本テレビ系)がそれに当てはまる。どちらも数字的には今ひとつながら、それぞれ有村架純・波瑠という朝ドラ女優を主役に起用。令和に通用するホームドラマだったり、新しい生活様式向けのラブストーリーだったりを追究する意欲作だ。

 朝ドラ女優といえばもうひとり、吉高由里子がヒロインを演じているのが「危険なビーナス」(TBS系)。ドラマ自体はサスペンスだが、吉高こそまさに「サバふわ女子」的な魅力でやってきた女優といえる。

 その一方で、田中みな実が象徴する「あざかわ(あざとかわいい)女子」のブームもあり、こちらは昭和のぶりっこが進化したものだ。「サバサバ女子」にもなんらかの進化が必要だとすれば「サバふわ」はそのひとつのかたちかもしれない。

 とはいえ、サバサバ女子界にも、前出・山本のほか、伊藤沙莉やファーストサマーウイカといった若手がいる。米倉らに続くにはまだ小粒な印象だが、はたしてどうだろう。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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