大ざっぱにいえば、家庭で夫や子どもに尽くす「かわいい」女より、外に出て男に負けじと働く「かっこいい」女がもてはやされるようになったのだ。テレビドラマでは「自立した女」が好んで描かれ「W浅野(温子・ゆう子)」ブームが起きた。さらに「おやじギャル」や「メッシー、アッシー、ミツグくん」といった現象も含め、1990年代、あるいは平成初期の日本はサバサバ系女子の時代といえる。

 その後、景気後退にともなう揺り戻しも来たが「女らしさ」のトレンドは意外と揺るがなかった。ドラマなどでは相変わらず「かっこいい」女が優勢で、江角マキコの「ショムニ」(フジテレビ系)や篠原涼子の「ハケンの品格」(日本テレビ系)がヒット。前出・米倉や宝塚歌劇団の男役だった天海祐希も高視聴率女優として君臨した。また、バラエティーから出た前出・木下も「理想の母親」に選ばれたりしたものだ。

 そんな風向きが変わってきたのではと感じさせた出来事がある。2017年、前出・江角の引退だ。彼女の好感度が大きく損なわれたのは、その3年前に発覚した長嶋一茂邸落書き騒動。彼女のマネジャーが長嶋邸の壁に「バカ息子」などと落書きしたという。その背景には、江角と長嶋夫人との確執が存在したとされ、両者はママ友だったが、途中で激しく対立する関係になっていたと報じられた。

 とまあ「サバサバ女子」には似つかわしくないスキャンダルだったわけだが、意外とこういうことはあるのかもしれない。11月10日の「踊る!さんま御殿!!」(日本テレビ系)ではふたりのフリー女子アナがこんな指摘をしていた。

「自称サバサバ女子ほど悪口を言ったり、ねちねちしてる女子のいや~な面を持ってる人が多いと思います」(寺田ちひろ)

「ただ口が悪いだけっていう。男っぽいから言っちゃう、みたいな感じで言ってるんですけど、実際、それはサバサバでもなんでもなくて」(鷲見玲奈)

 江角、そして木下はそのあたりを実証してしまったのかもしれない。

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サバサバに「ふわふわ」の要素が加わると人気に