「だしパック」は加熱しすぎてはダメ? 保育園で起きた奇怪な「ヒスタミン食中毒」 (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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「だしパック」は加熱しすぎてはダメ? 保育園で起きた奇怪な「ヒスタミン食中毒」

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写真はイメージです(Getty Images)

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和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している

和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している

 報道によれば、給食の調理業者が、ヒスタミンが入っていた市販のだしパックをメーカーによって定められた10分間より長く、45分間煮たとのこと、これによりヒスタミンがより多く抽出された可能性があるかもしれません。「だしパックの煮すぎが原因? 保育園の給食で食中毒 東京」とのタイトルで産経新聞が真っ先に報じ、家庭でも身近なだしパックの使い方に関わる報道内容が、ネットで話題となりました。 調理現場で一体何があったのか、検証が必要でしょう。

 だしパックの成分が調理の過程で化学反応か
 
 厚生労働省のサイトには、ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品、特に魚類及びその加工品を食べることにより発症する、アレルギー様の食中毒と書かれてあります。生魚などを食べた時のあの「じんましん」と考えていいでしょう。ヒスタミンは、マグロやカツオなど赤身魚やその加工品が適切な温度管理をされない時、ヒスタミン産生菌が増殖し、それらの食品中に多く含まれるヒスチジン(タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一種)が分解され、生成されることが知られています。

 この反応は、ヒスチジンとヒスタミンの化学構造式を見比べれば理解できますが、脱炭酸反応です。すなわち二酸化炭素(CO2)がヒスチジンから脱離(とれる、ぬける)すると、ヒスタミンが得られます。この反応は酵素の働きで進行します。

 さて、生魚でもまれにしか起こらないヒスタミン食中毒(2019年、8件、228名の患者、冷蔵技術が発達していない昔はもっと多かった)ですが、だしパックで起きた例はまずないでしょう。それでは、今回のヒスタミン食中毒は、だしパックを長時間過熱という通常とは違う条件で使ったことに原因があるのでしょうか。上記の脱炭酸反応が加熱によって起こるとすれば、大きな問題ですが、だしパックに含まれるヒスチジンが加熱によって脱炭酸してヒスタミンが生成したとも考えられるかもしれません。

 少し専門的になりますが、一般的に多くの場合、化学反応における脱炭酸は高沸点の溶媒中での激しい加熱を必要とします。しかし、窒素原子や酸素原子を含むある種の有機化合物や銅イオンがアミノ酸の脱炭酸反応の触媒となり、反応を加速させるという報告例があります。したがって、ヒスチジンは窒素原子を含みますので、脱炭酸反応が進行しやすいのかもしれません。


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