選手と監督という例も十分珍しいが、あくまで「人」と「人」の間で行われたトレードである。だが、過去には選手と「物」のトレードが発生した事例も多い。

 これまで選手と交換された「物」はバラエティに富むが、1900年代の初頭は道具も揃っていなかったためか、選手と交換されたのの中には、バット、ボールなど試合中に使われるものが多い印象を受ける。他にも、生きた七面鳥、牡蠣といった食べ物も選手の見返りとしてトレードされることもあった。ちなみに牡蠣と交換されたジョー・マルティナは後に“オイスター・ジョー”としてファンの間で親しまれることになる。

 近年では殿堂入りも果たしたデーブ・ウィンフィールド(ヤンキースなど)が、「ディナー」とトレードされるという事例も発生した。このトレードを引き起こす原因となったのが1994年に起きたストライキだ。ストライキはこの年の8月中旬から始まり、翌1995年の4月まで続くことになるが、実際にはストライキに入った後も1994年のシーズンは再開される可能性があったため、各球団はそんな中でも戦力補強を行っていたのだ。

 そして、その年ポストシーズン進出を狙える位置にいたインディアンスは、ツインズとのトレードを成立させ、ベテランの強打者ウィンフィールドを獲得。世界一を見据えリーグ再開後に戦う準備は整っていたが、結果的にストライキは長引き、残りのシーズンは行われることなく終わってしまうのである。

 ウィンフィールドのトレード交換相手に関しては、後に発表される予定だったものの、試合がなくなったことで消滅。そこで事態を解決するため、インディアンスの役員たちがツインズの役員たちをディナーに招待することで、“代わり”を果たしたのだ。ストライキが起こったゆえに生まれたエピソードであるが、ベテランとはいえ一流の選手とディナーとでは間違いなく釣り合いは取れていない感じは否めない……。(公式には金銭トレードとなっている)

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他にも発生した“変なトレード”