太田 制度が複雑ですよね。住宅型の施設を選ぶ人が多いですが、住宅型は介護サービスが別途契約になることを知らない人が多いです。ざっくりと違いを理解できても、施設によって言っていることは千差万別ですから、最終的には自分で個別に見学に行くしかないと思います。施設に何を望むのか。介護や医療だけでなく、住み慣れた地域か、別の土地か、食事はどうしたいか、ペットは連れていけるかなど。とにかく「これからどう生きていきたいのか」をトータルで考えていただきたいです。お金から入る人が多いのですが、優先順位としては、まず「こだわり」、その次に「予算」が望ましいですね。

安藤 お金の話がありましたが、親の老後の生活は親の資産で賄うのが原則です。年金や預貯金、不動産など、親の総資産をあらかじめ把握しておきましょう。

太田 お金の失敗で多いのは、入居年数が想定以上に長くなってしまったというケースです。施設の環境がよくて、「あと2、3年」と思われていた人が10年も長生きする。それは喜ばしい話なのですが、お金が続かなくなってしまいます。期間を短く見積もるのは危険です。平均入居年数はあくまでも平均であり、自分の親がどうなるかはわかりませんから、私はいつも100歳で計算したほうがいいとアドバイスします。今の時代、100歳以上も珍しくないので、女性は105歳のほうがいいかもしれません。

安藤 施設の予算を抑えるポイントとして、私は三つのアドバイスをしています。一つは入居金をうまく使うこと。入居一時金は最初にまとまった額が必要ですが、その後は最期まで固定費用で暮らせることが多く、基本的には長期になるほど得です。短期の予定であれば入居一時金なしで、月々の費用を高めに支払うほうがいいでしょう。二つ目は、特養(特別養護老人ホーム)を考えているなら要介護3になったタイミングで申し込むこと。入居待機者が多いものの、3年も待てばどこかに入居できます。要介護4以上になってから3年待つのは厳しいと思います。三つ目は、最後は遠くへ行くこと。いちばんお金がかかるのは家賃なので、都心から離れるほど安くなる道理です。介護保険は全国一律で、地方でも変わりません。

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