今年は田口の先発再転向が早い段階から予定されていた。昨年、担っていたポジションを含め、ブルペン陣をどうするかが課題となったが、編成権限も任される原監督の動きは早かった。7月には楽天から左打者に対し抜群の強さを誇る高梨雄平を補強、きっちり仕事をしている。また昨年途中に加入した鍵谷陽平、合同トライアウトから育成を経て這い上がった田中豊樹などが意地を見せているのも大きい。そして中川皓太、大江竜聖もさらに成長を遂げている。結果的に昨年以上のブルペン陣が出来上がった形だ。

「今年は苦戦すると思っていた。確実な先発が菅野だけだったので、田口を先発にしたい気持ちもわかる。ただそうした時に『第2先発』のような長い回を任せられる投手がいなくなる。そこで中継ぎに関しては、1回を確実に任せられる投手を使うことに決めた。左の中川、大江、高梨、右の鍵谷、田中、大竹らが十分に役割をこなしてくれた。後ろが充実すると先発にも戸郷翔征など、新しい投手が出始めた。戸郷などは開幕前に比べて制球力や球威がシーズン中に飛躍的に伸びた。移籍による適材適所の補強、台頭した若手の起用時期など、投手の見極めが的確だった」

「対照的なのが広島で、特にブルペン陣の人材不足が深刻。田口のような役割を果たしていたのが九里亜蓮。しかし先発の駒不足もあってローテーションに入らざるを得なくなり、試合中盤で失点を重ねる試合が増えた。終盤を任せていたセットアッパーやクローザーには疲労が見られる。そうなると連覇時の代名詞だった『逆転の広島』ができなくなる。広島も打線は強力なだけに試合中盤で粘れれば、試合を拾って行くこともできたと思う」

 16~18年まで3連覇を果たした時期の広島は、先発はもちろん、長い回を投げられる中継ぎなどブルペン陣も充実していた。一岡竜司、今村猛、中崎翔太、ヘロニモ・フランスアと鉄壁のリリーフ陣もいた。しかし連覇時に中心となって投げた投手に疲労が出始め故障者も出ている。「現在の位置も当然だ」と広島OBでもある川口は残念そうに分析する。

次のページ
横綱野球をやっていた時期もあったが…