今後、マンションの区分所有者の高齢化が進み年金生活者が増えると、積立金の増額や工事実施時に一時金を徴収することは難しくなります。

 長期修繕計画と資金計画を早い段階で見直し、将来必要になる金額を把握し、マンションの居住性と資産価値を維持向上するために必要な資金について、区分所有者が理解する努力が必要です。

 100戸のマンションが1戸あたり月額1万円を10年間積み立てると、元金だけで1億2000万円になります。金融機関に預けることになりますが、預金保険制度(ペイオフ)で保護される定期預金などは一つの金融機関で1000万円までとなっています。

 1億2000万円を定期預金で運用するためには12の金融機関を利用することになります。理事長が交代すれば預金の名義も変える必要がありますから、事務量も増え管理組合の負担も大きくなります。

■修繕積立金の運用やローンも考える 

 住宅金融支援機構が発行している利付債券「マンションすまい・る債」(図表A)を購入して、修繕積立金を運用することも有効な方法の一つです。

 債券購入の限度額の制約がなく、多くの金融機関を利用するような事務的な煩雑さも減ります。

 工事を行いたいが修繕積立金だけでは資金が不足する場合は、一時金徴収や借り入れを選択することもあります。一時金を徴収するということについて、管理組合で合意を得ることは難しいのが普通です。

 こうしたとき、管理組合が金融機関から借り入れをする方法もあります。

 最近は民間の金融機関のなかにも管理組合への融資に力を入れているところがありますが、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」(図表B)は長年の実績があり、使い勝手もいいようです。

 長期間固定の低金利融資で、一般的な工事は返済期間10年以内ですが、耐震改修工事などを含む場合には、返済期間が最長20年まで延長されます。

 また、一時金を負担するために60歳以上の高齢者が住宅金融支援機構の融資を受けるとき、毎月の支払いは利息だけで、借入金の元金は申込人が亡くなったときに相続人が一括して返済する仕組みもあります。

(文/飯田太郎、監修/マンション計画修繕施工協会)

※週刊朝日MOOK「資産価値を守る!マンション管理・修繕・建替え大全2021」から