また、20年にもより厳しい同法の改正が行われました。調査結果の石綿の有無にかかわらず都道府県などへの報告が22年4月から、石綿処理に関する作業基準の順守が21年4月から義務づけられます。

 マンションの場合、受注者である施工業者を見積もり合わせなどで決めますので、外装塗材などに石綿含有建材が使われているかどうかを、大規模修繕工事を計画する前に確認しておき、長期修繕計画に反映させておくことが必要です。 

 従来、仕上げ塗材の石綿含有が問題となる前から、エレベーターシャフト内や耐火被覆材などに飛散性の高い吹き付け石綿が確認された場合の処理工法は確立されています。除去、封じ込め、囲い込みのいずれかの方法で適切に処理することとされています。

 しかし、石綿含有仕上げ塗材が使用されている外壁修繕工事については明確な作業基準が示されておらず、業界内での混乱が生じていました。

 今回、前述の石綿関連法の改正にあたり、厚生労働省、環境省でそれぞれ有識者による検討会が設置されました。そのなかで石綿含有仕上げ塗材の取り扱いについては、飛散性の少ない建材として明確に位置づけられ、飛散性の高い吹き付け石綿の作業基準とは別に定められました。

 マンション計画修繕施工協会でも、実際の外壁補修工事での石綿飛散の実証実験をもとにした「現居住共同住宅外壁修繕工事における石綿含有仕上塗材対応ガイドライン」を作成し、各種修繕工法のなかから比較的費用増加の少ない石綿対応の推奨工法を紹介しています。

 いずれも、管理組合の負担の低減につながる動きといえるでしょう。

(文/飯田太郎、監修/マンション計画修繕施工協会)

※週刊朝日MOOK「資産価値を守る!マンション管理・修繕・建替え大全2021」から