新語・流行語にノミネートされた「フワちゃん」(C)朝日新聞社
新語・流行語にノミネートされた「フワちゃん」(C)朝日新聞社
「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞第37回2020年ノミネート語より
「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞第37回2020年ノミネート語より

 11月5日、『2020ユーキャン新語・流行語大賞』のノミネート30語が発表された。コロナ禍に見舞われた時代状況を反映して、「3密(三つの密)」「ソーシャルディスタンス」「アベノマスク」「自粛警察」といったコロナ関連語が多数含まれていた。

【図】2020年新語・流行語ノミネートはこちら

 かつては、芸人の一発ギャグや決めフレーズが流行すると、ここで取り上げられることも多かったのだが、最近はそういう単語がノミネートされることが少なくなっている。

 今年、お笑い関連で入っていたのは「時を戻そう(ぺこぱ)」「まぁねぇ~(ぼる塾)」「フワちゃん」の3つのみ。これでもここ数年の中では多い方だ。

 この3つの中でギャグやフレーズと言えそうなのは「時を戻そう」と「まぁねぇ~」の2つである。確かに、ぺこぱもぼる塾もテレビにたくさん出ていて売れっ子には違いないのだが、フレーズ自体には「流行語」という印象は薄い。

 2020年のお笑い界が盛り上がっていなかったかというと、決してそんなことはない。コロナの影響でテレビの収録が減ったり、ライブや営業が軒並み中止になったりしているとはいえ、その中で新しく出てくる芸人も大勢いた。

 昨年からの「第7世代ブーム」が続いていて若手芸人に勢いがある上に、ぺこぱ、すゑひろがりず、ミルクボーイ、かまいたちなど、昨年末の『M-1』で活躍した中堅芸人たちも順調に仕事を増やしている。

 しかし、このお笑い界の活況が、新語・流行語大賞のノミネート語には十分に反映されていないように見える。なぜそんなことになっているのだろうか。

 結論から言うと、ここ数年のうちに人々のお笑いの楽しみ方が変化したからだ。今から10~15年前には『エンタの神様』『爆笑レッドカーペット』といったネタ番組が流行っていて、キャッチーな決めフレーズを連呼するような芸人が続々と出てきていた。

 彼らの多くは、短期間のうちに一世を風靡する活躍をしながらも、その後は人気が落ちていき、やがて「一発屋」の汚名を着せられるようになっていた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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決まったギャグがないフワちゃんはなぜノミネートされたか