「上半身裸にタイツという姿や下品な逸話がコンプラ重視のテレビにおいて敬遠されているので、何をするかわからない江頭さんを使いたがる制作スタッフもあんまりないですし、今やすっかり“ネットの人”となっています。ももともと、出演番組も『めちゃめちゃイケてる!』や『ぷっすま』など、仲のいい芸能人がホストの番組に呼ばれるくらいでした。コンプラが厳しくなって出しにくいというより面に加え、単純にテレビではウケなくなったというのもあると思います」(同)

■欲望むき出しのクロちゃんと原始的なザコシ

 そうしたなか、“江頭的”なポジションを担う次の芸人探しが業界で始まっているという。

「テレビの枠をうまく超えてニュースになったり、“お約束”を無視した笑いを取れる存在という意味では、安田大サーカスのクロちゃんとハリウッドザコシショウあたりが、そんな存在とも言えるかもしれません」(民放バラエティ制作スタック)

 バラエティは現在、常にSNSやネットニュースに監視されという厳しい条件下で制作されている。そうした状況下で、2人はギリギリのラインで番組をかき回すトリックスターとして業界内で注目を集めているという。

「クロちゃんはお笑いの王道として評価されてきたわけでは決してないですが、『水曜日のダウンタウン』でのブレイクがやはり大きい。炎上を恐れないヤバい発言の連発や、ツイッターでの嘘を視聴者が本気で怒りをぶつけるというのも今っぽい。SNSでの罵詈雑言がネットニュースにもなり、番組が盛り上がりますからね。こういうタイプの芸人さんは今、なかなかいないので他の番組でもキャスティングしたがるのもうなずけます。彼自身に江頭さんのように番組をかき回すという自覚はないと思いますが……」(同)

 一方のハリウッドザコシショウは「R-1ぐらんぷり2016」で優勝するなど、お笑い芸人の間でも高く評価されているが……。

「先日も『水曜日~』の替え歌企画で優勝していましたが、決勝で対戦したどぶろっくや他の芸人も『マジメにネタ作ったほうが損をする』という趣旨の発言をしていました。ザコシさんのネタはまさに“ちゃんとやること”を放棄した、逸脱した部分が面白い。上半身は裸のパンツ一丁ではありますが、コンプライアンス的にNGというわけでもなく、画面的に汚いというほどでもない。それでも予定調和ではない笑い、ということで視聴者にハマるんだと思います。関係のある先輩芸人がMCをしている番組や深夜のお笑い番組に出演機会が限られている点も、江頭さんと共通していると思います」(同)

 業界内で2人が「ポスト江頭」のポジションとして注目を集めている現状に関して、お笑い評論家のラリー遠田氏はこう分析する。

「クロちゃんの強みは、カメラが回っていても回っていなくても、欲望のままに行動することに一切のためらいや恥じらいがないことです。それでいて意外と頭の回転が速く、演出の意図を察知して上手いリアクションができるところもあるので、ドキュメンタリー要素のある企画では重宝されるのでしょう。一方、ハリウッドザコシショウの魅力は、からだひとつでゼロから笑いを生み出す突破力があること。変な動きをする、変な表情をする、奇声をあげるといった原初的な手法で、人間の本能に訴えかけるようにして笑いをもぎ取っていきます。本人の絶対的な自信が伝わってくるので、見る側はその迫力に圧倒されて思わず笑ってしまうのです」

 コンプライアンスやクレーム対策で年々、バラエティ番組の表現の幅は狭まっている。そんな時代において、江頭が抜けた穴をどの芸人が埋めるのか。今後も注目だ。(今市新之助)