「個人的な意見だが、獲れる選手は獲れば良い。でもその場合はポジション編成が難しくなる。仮に山田を獲得しても、今の調子なら吉川も試合に使いたい。2人を併用するとなると、腰痛持ちの吉川の外野コンバートの可能性もある。二塁・山田、外野・吉川だね。そこで大事なのは気持ちのケア。しっかり話をして納得させる必要がある。何も話がなくていきなりでは、吉川本人の気持ちは厳しくなる。前向きに野球に臨めなければ、『世代交代』どころではない。吉川本人は二塁でのレギュラー定着を目指していたわけだから。プロならやれ、という人もいるが、そこは人間だから感情もあるよ」

　チーム強化のためならば、やれることは全部やるべき。しかしその中でも感情や人情も大事にしなくてはいけない。勝ちながら、選手を育て、世代交代を果たすのはたやすい仕事ではない。

「巨人には伝統を感じる。日本で一番の歴史を誇る球団。歴史も長いし結果も出している。OBの数もダントツに多い。今、プレーしている選手たちがどういう気持ちでやっているかはわからない。でもOBとしてはチームに対する愛着がある。ファームの若い良い選手たちが1軍で頑張って定着して欲しいという気持ちも強い。何があっても諦めず我々が巨人を引っ張って行く、ということを常に考えて欲しい」

　巨人への深い愛を持つ篠塚は、『生え抜き』の若手選手たちへのメッセージで締めてくれた。（文中敬称略）

（文・山岡則夫）

●プロフィール
山岡則夫／1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time！』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time！公式ページ、facebook（Ballpark Time）に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。