これに対し「私もそう思います」と答えていた原田。こうした「二股力」を若い時代にあれほど高いレベルで磨けることは珍しい。角川の親心が生きたかたちだ。

 そういえば最近、原田が「The Covers」で松田聖子や竹内まりやを歌ったように「エール」では薬師丸が戦後の焼け跡で賛美歌を独唱して話題になった。ふたりとも「歌う女優」としての持ち味をいかんなく発揮しているわけである。

 もちろん、今も映画やドラマの主題歌を主演女優が歌うことはあるが、質量ともに角川三人娘のインパクトを超えるものはない。また「三人娘」などというくくり方もしなくなった。

 彼女たちの息の長い活躍は、昭和の芸能界、そしてあの時代の熱気を思い出させるものでもあるのだ。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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