ちなみに自動運転バス後方のデジタル方向幕は「低速走行中」を表示、公道は追い越し禁止を示すオレンジの車線はひかれていない。

 オペレーターの判断で運転再開。往路では5回一旦停止し、12時53分、よこはま動物園のバスターミナルへ。自動運転を開始してから8分を要した。ここで2分停止したのち、復路に入る。

 12時55分に発車。左折すると曲がり過ぎたのか、縁石にぶつかりそうになり、乗務員の判断で急停車。幸い事故には至らず、負傷者もいない。

 後続車の通過待ちを終え、運転再開。復路の一旦停止は4回で、10分を要し、里山ガーデンに戻った。

■大型2種免許取得者の減少と高齢化

「導入は“できるだけ早くに”と思っています。ただ、技術が日進月歩、進んでいくものですから、今のところは“できるだけ早く”ということで、ご勘弁いただきたいと思います」

 相鉄バスの菅谷雅夫社長は自動運転バスの早期導入に意欲的だ。現状、相鉄バスの運転士は足りているが、将来の運転士不足を懸念している。現在、大型2種免許の取得者が90万人を切り、所持者の半分は60歳以上だという。

 近年、一部のバス事業者でバス運転士を募集し、入社後、大型2種免許取得の費用を全額負担する方針を打ち出すところもある。ただ、運転士というのは、免許を持っているだけでいいものではない。運輸業に従事している以上、乗客の命と財産を絶対に守らなければならず、事故を起こしてはならないのだ。

 2012年7月、東京メトロ東西線の運転士を取材した際、想像以上に過酷な世界であることを実感した。バス業界でも同様のケースがあるのではないだろうか。

■自動運転バス実現の可能性と課題

 今後、レベル4の実現に向けて、小木津氏は実現に向けた構想を力説した。

「自動運転システムがほとんどのことを認知、判断、操作できるようになってこそ、レベル4であると思います。(自動運転でありながらも「遠隔監視・操作システム」により)人が監視しているクルマというのは、どこか安心感がある。私はこの安心感が大事だと思っています。将来においては、“誰かが見守っているよ”みたいな仕組みを考えつつも、自動運転のメリットを入れていくためには、“なるべく操作をしない”ことが必要になってきます」

 遠隔監視を採り入れることで自動運転の技術をさらにアップするほか、走りやすい環境を見出す必要があるという。近年台頭した連接バス、電気バスでも、自動運転に対応できるそうだ。ただ、2019・2020年の実証実験は信号機のない公道で行われ、運転速度は時速20キロのまま。レベル4の実現に向けては、最大時速60キロまで走行できるか、カメラやGNSS受信機などが信号機の色を識別できるか、が課題となるだろう。

 後日、ある路線バスに乗車した際、運転士は歩行者信号が赤に変わり、自動車用信号が黄色に変わらないうちにブレーキをかけ、安全に万全を期した。乗務員がいないかたちで自動運転を実施する場合、最大の難関はブレーキをかけるタイミングだと思う。

 今後も自動運転バスが実用化されるまで、取材を続けていきたい。(文・岸田法眼)

取材協力/相鉄バス、相鉄ビジネスサービス

岸田法眼(きしだ・ほうがん)/『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして、『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人刊)、『論座』(朝日新聞社刊)、『bizSPA! フレッシュ』(扶桑社刊)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』(アルファベータブックス刊)がある。また、好角家でもある。引き続き旅や鉄道などを中心に著作を続ける。