原稿の校閲作業。正確な情報を伝えるため、文字や内容を確かめる作業を何度もおこなう (c)朝日新聞社
原稿の校閲作業。正確な情報を伝えるため、文字や内容を確かめる作業を何度もおこなう (c)朝日新聞社

前田安正さん
前田安正さん

「読点」の使い方に迷ったことはないだろうか。読みやすく伝わりやすい文章を書く際に、「読点」は隠れた主役ともなる。

【朝日新聞のベテラン校閲記者・前田安正さんの写真はこちら】

 長年、朝日新聞の校閲記者として活躍してきた前田安正氏が、読み手に伝わる文章を書くためのノウハウをまとめた『きっちり! 恥ずかしくない! 文章が書ける』(朝日文庫)から、一部を抜粋・改編してお届けする。

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 文章を書く際に、あまり意識されないのが「句読点」です。「。」が句点、「、」が読点です。句点は文の終わりに打つので、比較的問題はないように思います。ところが、読点の打ち方はさまざまで、これといった決まりがありません。

 著者も小学生のころ、読点は主語の後に打つ、接続詞の後に打つ、息継ぎのところで打つなどと、習った記憶があります。しかしそれらは、多分に感覚的です。感覚的であることを全て否定するつもりもありませんが、もう少し納得のいく説明ができないものか、と思うのです。

 そこで、文の要素を意識しながら読点の打ち方の一端を紹介したいと思います。

■読点の直前のことばを強調する

【1】僕は公園でジョギングをした。

 この短文にあえて読点を打つ必要はないかもしれません。しかし、次のように読点を打つと意味合いが少し変化します。

【1-1】僕は、公園でジョギングをした。
【1-2】僕は公園で、ジョギングをした。

 こうすると、【1-1】は「誰がジョギングをしたのか=僕」、【1-2】は「どこでジョギングをしたのか=公園」という具合に、読点の直前のことばが強調されます。

■文の要素の区切りを明確にする

【1】を基に、要素を少しずつふやしていきます。

【2】僕は朝早く起きて公園でジョギングをした。

【1】の文に、「朝早く起きて」という要素が加わりました。要素が二つ以上並んだときには、要素の区切りに読点を打ちます。

【2-1】僕は朝早く起きて、公園でジョギングをした。
【2-2】僕は朝早く起きて公園で、ジョギングをした。

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