ナインティナイン矢部浩之(C)朝日新聞社
ナインティナイン矢部浩之(C)朝日新聞社

 10月29日放送の『アウト×デラックス』(フジテレビ)には、普段とは違う面白さがあった。本来、この日は事前に収録していた映像が流れる予定だったのだが、ひき逃げなどの疑いで逮捕された俳優の伊藤健太郎がそこに出演していたため、全面的に内容を差し替えることになった。

 放送当日の午前中に逮捕の速報があったことを受けて、この番組では急きょ新たにスタジオ収録を行うことになった。番組の公式ツイッターでは、当日の13時59分に「みなさんにお知らせです!今夜のアウトデラックスは、全面的に内容変更急遽決定!これから収録します!!」と告知されていた。

 当日収録ということは、編集にはほとんど手間がかけられない。そのため、生放送に近い状態で、収録した素材をほぼそのまま流すような、いわゆる「撮って出し」の放送が行われた。

 普段のこの番組では、きちんと手間をかけて編集された映像が放送されている。スタジオのトークの中から、面白いところだけが切り取られていたり、音楽や効果音やテロップが施されていたりする。

 そういう装飾がほとんどないこの日の放送は、物足りないものだったかというと、意外とそうでもなかった。むしろ、生には生の良さがあるな、と思わされた(正確には生ではないが)。

 幸運なことに、MCであるナインティナインの矢部浩之は、この日にもう1つの生放送番組に出演していた。19時56分から放送される『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ)である。岡村隆史が結婚したことを受けて、岡村が番組スタッフの前で結婚報告をするという企画が生放送で行われた。

 そちらのエンディングでは、岡村が結婚記念に1人で大きなケーキに入刀しようとしたところ、ケーキが爆破されてクリームまみれになっていた。

 ここで、わかりづらいかもしれないので時系列を整理すると「『アウト×デラックス』収録→『ぐるナイ』生放送→『アウト×デラックス』放送」という流れだった。この並びが奇跡を生んだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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