圧倒的な強さで3連覇を達成した時期の選手層は厚かった。

 打線では田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の『タナ・キク・マル』が得点の口火を切った。日本の主砲・鈴木誠也、チャンスにめっぽう強い松山竜平、打てる捕手・会沢翼などが続く。また西川龍馬、野間峻祥、安部友裕らも控えるなど、得点能力はずば抜けていた。そして捕手・会沢、二遊間・菊池、田中、中堅・丸で形成されたセンターラインを軸に、リーグ屈指の守備力も武器であった。

「広島はここ数年でかなり戦力ダウンしている。きっかけは、18年オフに丸がFA巨人入りしたこと。広島に残留してくれれば言うことはなかったが、中堅に野間や西川を起用することで乗り切れると計算していた。しかし2人は確固たるレギュラーとして、年間通じての経験がなかった。攻守において丸の代わりには少し早過ぎた。丸の人的補償で巨人から加入した長野久義の中堅起用も考えられたが、ベテランということでフル出場は難しい。3連覇中、2回MVP獲得した丸の存在感は思った以上に大きかった。不動の3番を任されたセンターラインの要ですから」(広島担当記者)

 複数年契約を結ぶことによる弊害も、低迷の原因の1つとして挙げられる。

 広島は誰もが知っている通り“貧乏球団”だった。中央球界では名が知られていない選手や、中南米の身体能力抜群の選手を発掘し、自前で育て上げてきたことは有名だ。しかし彼らが活躍し、年俸が高くなると他球団へ移籍してしまうのが伝統でもあった。

 だが、ここ数年の勝利、そして人気上昇によって球団収入はかつてと比べ物にならないほど増えた。選手に対しても好条件を提示できるようになり、主力選手とは高額での複数年契約を結ぶようにもなった。

 誰だって人の子である。高待遇のもと、それまで以上に追い込んでプレーするのはなかなか難しいものがある。

「左腕エースのクリス・ジョンソンは複数年を結んだ選手の典型。来日入りした15年からの2年間は相手打者を圧倒するような内容で14、15勝と結果を残した。しかしその後3年契約を結ぶと安定感を欠く投球が目立つ。数字だけ見れば悲観するものではないが、ハングリー精神剥き出しのガムシャラさは見られなくなった。米国球界への復帰も噂されたが、条件、環境などを含め広島での安定を選んだ。練習メニューなども任されており、ジョンソン自身にとっては過ごしやすい環境であることは間違いない。そして昨オフには会沢がFA権を行使せず3年契約で残留した。日本を代表する『打てる捕手』の残留は最も歓迎することだが、今後に対する不安もないわけではない。まぁ、今年を見ている限り杞憂に終わりそうですが。あとは大型複数年を結んだ菊池ですね」(広島担当記者)

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最も心配な菊池の現状は…