取材したシステム開発会社では、リモート会議中に管理職が、役員の顔が映る画面が一番下になっていることを気にして、情報システム部に

「役員の顔が一番下に映っていた。これはいかがなものか? 役職別に並べられる機能がついたシステムを使うべきでしょ」

 と起案してきたといいます。たまたまタイミングよく、自社が導入していたシステムで対応できるようになったので大きなコストや手間はかからなかったようですが、その起案を受けた若手社員は

「こんなムダなことに時間をかけるべきでしょうか?」

 と大きな疑問を感じて、モチベーションも下がってしまったようです。

 加えて、リモート会議の退出の順番にも意見が出ていたとのこと。会議終了後、退出をする順番は若手からではなく、年齢順であるべき。さらに、どうしても急いで先に出るのであれば、申し訳ない姿勢をしっかり示すべきだというのです。

「すみません。みなさまより先に退出させていただきます。お先に失礼します」

 くらいの態度が必要と言い出した役員がいたとのこと。さすがにこの件はルール化するには至りませんでしたが、年配の社員がリモートでさえ形式的な配慮にこだわることが明らかになった出来事かもしれません。

 新しい生活様式にかわる機会に、こうしたムダは増やしたくないもの。どうしたらいいのでしょうか?

 会社は、生産性の向上を強く求められるようになりました。コロナで業績が下降気味であることだけでなく、もともと日本企業は世界比較で生産性が低い。このままでは生き残れないといわれています。ゆえに生産性向上のために働き方の改革や業務の見える化などが行われるようになりました。

 上司もその流れで生産性の向上を会社から強く求められていますから、そこを指摘するといいでしょう。

「ハンコ出社が週に3回になるのは生産性向上の観点でどうでしょうか」

「リモート環境を役職順にするための改定にかける時間は、生産性向上の観点で必要でしょうか?」

 と問われればノーとしか返せないはずです。もちろん、上司にもプライドがありますから、喧嘩を売るような言い方をすれば、相手も感情的になってきます。丁寧に理解を深めてもらえるような問いかけで行うのがポイントです。

 いずれにしても、リモート環境の仕事が増えた機会にムダな形式は巧みに排除していきたいですね。

西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。

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西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。

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