5.鯔のつまり(=とどのつまり)
~出世魚の名前の変化が「鯔」で終わる

 トドといっても、アシカに似た大型の海獣ではありません。ここでのトドは魚で「鯔」と書きます。鯔はオボコ、スバシリ、イナ、ボラ、トドのように変わる出世魚の最後の呼び名です。「つまり」は「終わり」のことで、最後は鯔で終わることから「結局」「最後の最後には」などの意味になりました。イナもボラも「鯔」と書くので、あまり漢字表記はされないようです。

6.努々(=ゆめゆめ)
~「ゆめ」は「けっして」の意味「夢々」とは書かない

 「ゆめゆめ」の漢字は「夢々」だと思われがちです。ここでの「ゆめ」は「けっして」という意味で、漢字は「努」と書きます。「努々忘れるな」のように禁止の語を伴って「けっして(忘れるな)」という意味や、「努々思わなかった」のように否定の語を伴って「少しも(思わなかった)」という意味になります。「努力努力」とも書きます。

7.向きになる(=むきになる)
~相手に立ち向かう意味から「向き」が用いられている

 ちょっとしたことに腹を立てたり、本気になったりする意味です。「むき」は、難しい漢字が使われていそうですが、意外にも「向き」という身近な漢字が用いられています。相手のほうを向き、立ち向かう意味合いから、腹を立てていることを表しています。

※漢字エンタメ誌「みんなの漢字2020年11月号」から抜粋
監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)