法制度は整備されているのに、なぜ育休の取得が進まないのか。安藤さんは「制度より風土が悪い」と指摘します。「昔ながらの経営者や上司は、自分の価値観で職場の空気を作ってしまう。50代ぐらいまでの男性は、『仕事だけやっていればいい』という選択が多かった。そういう意識だと、若い社員は育休を取りづらいわけです」

 ただ、安藤さんは、対象となる社員の意識も大事だと語ります。「制度があるのに、組織の空気を忖度したり、評価が下がると思ったりして取らない。または、いざ取得する段階になって、十分な引き継ぎなどの準備をせずに休みに入ってしまう。そうすると、職場からは歓迎されませんよね」

 対照的に育休取得率が高い会社は、「組織と個人がうまくかみ合っている」と安藤さん。「経営陣がしっかりとメッセージを発し、それを理解した管理職がマネジメントをする。しっかり準備をして育休を取る人は、育児を通じて家族の絆を強める。そうすると、仕事へのモチベーションも上がるので、組織にとってもプラスになります」

「男性の育児は家族サービスではなく、まさに家族のケア。とても重要な役割であることを、会社も当事者も理解していってほしいですね」