今季限りで現役を引退した五十嵐(写真提供・ヤクルト球団)
今季限りで現役を引退した五十嵐(写真提供・ヤクルト球団)
高津監督(右)に花束を贈られる五十嵐(写真提供・ヤクルト球団)
高津監督(右)に花束を贈られる五十嵐(写真提供・ヤクルト球団)
ファンに挨拶をする五十嵐(写真提供・ヤクルト球団)
ファンに挨拶をする五十嵐(写真提供・ヤクルト球団)

 五十嵐亮太は最後も「ワイルド・シング」だった──。

 10月25日、ヤクルトの本拠地・神宮球場。この日の中日戦が五十嵐の引退試合として行われることは事前に告知されていて、チケットは早くからソールドアウト。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、まだフルに観客を入れることはできないものの、神宮のスタンドは現在の上限に限りなく近い1万4484人の観衆で埋まった。

 しかも、この日はグリーンの「TOKYO燕パワーユニフォーム」が観客にプレゼントされたこともあり、レフト側の一部を除いてチームカラーの緑一色。2004年に当時としては日本プロ野球最速タイの158キロをマークし、「神宮球場がヤクルトファンで満員になったら、160キロ出せるかもしれない」と話したこともある五十嵐にとって、これ以上ない舞台が整っていた。

 試合前から熱気に包まれていたその神宮に、米国のパンクバンドX(エックス)の『Wild Thing(ワイルド・シング)』が流れたのは、両軍のスターティングラインナップが発表された直後のこと。過ぎし日に何度もこの場所で聴いた曲に、思わず懐かしさが込み上げてくる。

 日本のヴィジュアル系ロックバンドのX JAPANが、もともとのバンド名である「X」から改名したきっかけになったと言われるこのバンドを知らずとも、日本でもヒットした映画『メジャーリーグ』シリーズのサウンドトラックであるこの『Wild Thing』は、話が別だろう。

 さらに言えば、干支が一回りする前からヤクルトを見てきたファンならば、知らない者はまずいない。それはこの曲こそが、五十嵐がメジャーリーグに移籍する以前、2008年頃まで自身の出囃子として使っていたナンバーだからだ。

 映画の中では、この曲はチャーリー・シーン演じるクリーブランド・インディアンスのクローザー、リッキー・ボーンの登場曲として使われている。ワイルドな性格と、球はめっぽう速いがコントロールは恐ろしく悪いというワイルドな投球スタイルから、付いたあだ名が「ワイルド・シング」。それでこの曲を使っているという設定だったと思う。

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年齢とともに変化もあった投球スタイル