――そうなると、会社としては社員の家庭状況に応じて、担当を配慮するということも重要になると思います。

高橋:そうですね。ただ、さきほど例示した政局の流動化などは、日々のニュースを追う持ち場の繁忙期のイメージです。私はいま文化くらし報道部で生活報道に関わっていますが、私の持ち場だと、「今日○○の会見があるからすぐに行ってくれ」みたいなことはあまりない。予定は以前に比べて立てやすくなりました。子どもを保育園に送り届ける支度は私が担当できていますし、帰りのお迎えも週2回担当しています。なるべく家族と夕飯を食べます。娘が寝てから帰る日は月に1,2日くらいでおさえるように努めています。

 そもそも、長時間労働を是とする人はほとんどいません。「男性だって子育てするべき」という考えは浸透していますし、例えば社内でアンケートをとれば多くの人がそう答えるでしょう。

 男性を育児から遠ざける背景には、労働環境による「外部の力」による影響もありますが、実は男性が周りの目を気にしすぎている面も大きいと思います。

――確かに定時で帰ることに罪悪感を覚える自分がいます。そんなとき、妻から「私がやろうか?」なんて言われると、ついつい甘えてしまうんですよね。

高橋:その気持ちはすごくわかります。ただ忘れてはならないのは、こうした仕事と育児の狭間に揺れる男性の葛藤は、これまでの女性たちの育児負担の偏重を「後追い」で体感している側面が大きいということです。「早く帰るのは申し訳ない」「上司が理解してくれない」「出世できないのではないか」といった悩みは、多くの女性たちがこれまでに経験してきたことです。

「イクメン」という言葉がありますが、私はこのように呼ばれることに違和感があります。同じように考える人は多く、理由は人それぞれですが、取材でよく聞かれたのが、「当たり前のこととして育児に関わっているのに、なぜ『イクメン』と特別扱いされるの?」という違和感です。記者さんはいかがですか?

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「イクメン」という言葉が残る社会