1次、2次試験合格後、11月の秋季キャンプに1カ月間参加する必要があることを告げられると、悩んだ末に会社を辞め、プロ入りのラストチャンスにすべてを賭けた。

 だが、この年はすでにドラフト指名枠一杯の8人が確定していたため、指名を見送られ、ドミニカのカープアカデミーに1年留学するよう指示された。

 暑いドミニカで30試合130イニングの実戦経験を積み、球速も140キロから147キロにアップ。フォークボールもマスターした。

 そんな努力が報われて、98年のドラフトで最後の8番目に指名を受けた。ドラフト当日、広島が上位で思わぬ選手を獲得して、枠が削られるのではないかと心配しつづけていただけに、さすがにホッとした様子。「目標は同じ道を歩んだ大野(豊)さん。3年間のブランクはすぐに埋めたい」と力強く抱負を語った。

 主にリリーフとして、02、05、06年に40試合以上の登板を記録するなど、実働11年で通算243試合、9勝12敗1セーブ25ホールド。元六大学の4番らしく、99年9月29日の阪神戦では、投手史上6人目の初打席初本塁打の珍記録もつくっている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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