しかし、むし歯や歯周病などにより、やむをえず永久歯を失うと、生え変わりはありません。歯を失ったままでいると、かみ合わせは悪くなり、かむ力も衰えます。結果、お口の健康を大きく損なってしまうのです。

 これまでは、いわゆる「入れ歯」や「ブリッジ」のような装置を利用して、失った歯を補い、お口の健康を回復してきました。しかし、ここ数十年、それに代わるものとして大きな存在感を示してきた装置があります。

 それがインプラントです。

 「入れ歯」や「ブリッジ」に比べてインプラントには「しっかりかめる」「残った歯に負担が少ない」「見た目が自然で美しい」などの利点が多くあります。なかでも、インプラントの最大の利点は、「しっかりかめること」ではないでしょうか。かむ機能を最も回復できるために、「第二の永久歯」といわれることもあるのです。

 日本でのインプラント治療の歴史はまだ新しいもので、歯科医療として認められたのは1960年代以降です。この半世紀、とりわけ過去20年間にインプラント治療は日本を含めて世界中で普及し、多くの患者さんがこの治療によりお口の健康をとり戻しています。

 一方で、インプラント治療は入れ歯やブリッジなどとは異なり、外科手術を伴います。従来の治療法に比べて治療期間が長くなること、治療費が高くなることなどの理由で、受診をためらう患者さんが少なくないのも事実です。また、医療情報が氾濫しているため、正しい情報を求めている患者さんが数多くいらっしゃいます。

 こうした状況に、インプラント治療についてわかりやすい情報を提供する本が必要だとの声を受け、この度刊行したのが『「かめる幸せ」をとり戻す』(朝日新聞出版刊)です。

 オーラルフレイル、ひいてはフレイルにならないためにも、「かめる幸せ」をとり戻し、健康に長生きするためにも、インプラントにすることを考えてみるのもいいかもしれません。

※『「かめる幸せ」をとり戻す』より抜粋