長いMLBの歴史では珍しい退場劇も多く存在する。2014年には当時フィリーズの守護神だったジョナサン・パペルボン投手がセーブに失敗して降板する際に地元ファンからブーイングを浴び、股間をおさえる“卑猥なジェスチャー”でお返しした。

 この行為が審判の目に留まり、「プロにあるまじき行為」だとしてパペルボンに退場を宣告した。さらにメジャーリーグ機構は7試合の出場停止と罰金を科し、パペルボンは謝罪して反省の意を示したという。

 2017年には通算3000安打の強打者エイドリアン・ベルトレ内野手が意外な理由で退場となった。ベルトレは投手の球筋を見ようとオンデックサークル(日本でいうところのネクストバッターズサークル)よりもホームベース寄りで待機していたところ、審判にサークルへ戻るよう指示された。

 ここでベルトレが取った行動は、サークルそのものを本塁側へ引きずって移動させるというもの(※オンデックサークルは円形のマットで移動も可能)。某とんちアニメならば天晴れとなるところだが、もちろん審判には通じず(ある意味では順当に)退場処分となった。

 逆に審判が意外な退場処分を宣告して物議をかもしたこともある。2019年8月のブルージェイズ対ヤンキース戦で、球審が突如としてヤンキースベンチへ向けて退場を宣告した。判定に対する暴言に対するものだったというが、問題は退場宣告されたブレット・ガードナー外野手は暴言など吐いていなかったこと。

 なんと問題の球審は誰がやじを飛ばしたのか確認するどころか、ヤンキースベンチの方を見もせずに退場処分を宣告していたのだ。もちろんガードナーは茫然自失の直後に激高して無実を訴えたが処分は覆らず。テレビ中継の実況も「ノールック退場だ!」と驚きを隠せない様子だった。

 現在は審判への抗議の際もソーシャルディスタンスを守ることが義務付けられているが、感情が高ぶってしまえば規制も破られがちになってしまうもの。無観客ゆえのヤジの聞こえやすさも含め、今季のMLBでは例年以上に忍耐力が試されているのかもしれない。(文・杉山貴宏)